放談トップ  前へ  次へ Top

◆ 第30回 主なテーマ 29回の続き、ラベルの話
真贋の話、材の話などあって
お弁当タイムなど

 

 

 

そろそろ食事の時間です

 

  

この間BS-Hiで鈴木大介やっていたね。ギター2本持ち替えていた。

ああ、サントリー・ホールの時の。指がよく映っていましたね。

 
 
 
お弁当の準備
 
 
…「菊の井」のお弁当です。

菊の井? ここらにあったっけ。

高島屋に入ってるんです。以前木屋町の方の菊の井行きましたけど。その時はとても美味しかったですよ。このお弁当はどうか分からないですけど。

菊の井の村田さんって言ったっけ、今の主人はわれらと同じくらいの歳かな?

だと思いますけどね。
いかめしは岩手の物産展で、ほたて味のいかめしとか。ドイツ・ソーセージは切り落としです。いろいろ入ってます。

いつも思うけど、いかめしって小さいよね。普通のいかから想像するともっと大きくできそうな気がする。これってやりいかじゃないでしょ? 普通のするめいかだよね。

中がもち米だから結構膨らむんだよね。太くなる分短くなる。

やりいかでもできそうだね。

ほたるいかで作るとか…(笑い)手間かかりそう。

ははは、そりゃ大変だ。ほたるいかの握り鮨はあるけどね。

乗っけるんですよね。

そう、一個か二個乗っけて。あれ結構手間らしいよ。中の軟骨と目を抜かなきゃいけない。あらかじめ抜いておくと痛むので、寸前に抜くんだって。

ほたるいかってあんまり生で食べないのではないですか?

ここらでは生ではほとんど食べられないよ。

あちらでも(富山)あんまり…生は中に何かいるんですよ。だから気をつけなくてはいけないのですよ。

ほぅ。そうなんだ。

一時食べたけどね、よく。

生っぽいものは食べますけど、酢の物とか。

からし酢味噌で食べるとうまいよね。でもあれは茹でたやつだよね。

 
 
 

一同 そうです、そうです。

 

  

大介君の今井ギターはトーレス・モデル?

あれは外だけ。中は全く違うのとレイズド・フィンガーになっていますし、デザインだけ。

ああそうか、外はそうだよね。(本を見ながら)ロゼットにこんな雲みたいな螺鈿が付いていたね、こんな感じ。

綺麗でしたよ。

綺麗だよね。

メープルの。

あのハカランダの楽器も綺麗だね。あの臙脂の感じがすごくいい。

 
 

話がちょっと新しくなりますけど、トーレスよりは、サントスでしたっけ?なんかラベルを作って…

サントスにはラベル二種類あるよね。

ん? トーレスのラベルの上に貼ったとか言う…

あ、その話か。あれはマヌエル・ラミレス。

マヌエル・ラミレスでしたっけ。

昔読んだ本ではラミレスがトーレスのラベルを手に入れたって書いてあった。だけどトーレスのラベルを手に入れたって事が本当にあるんだろうかと思うんだよね。
ロマニロスのこの本ね、「アントニオ・トーレス その生涯とギター」、これによるとマヌエル・ラミレスがトーレス風のラベルを作ったって書いてある。トーレスのラベルを手に入れたじゃなくてトーレス式のラベルを作ったと。作ったって言ったって、トーレスのラベルいくつかあるうち、うんと簡単なやつって言うのはただフリーハンドのコイル模様だから作るの簡単だよね…

トーレスのラベルなんてそんなに出回らなかっただろうし、それをしかもマヌエル・ラミレスが手に入れるって言うのもおかしな話だ。だから作ったというのが本当じゃないかと思うよ。

そして、それを貼ってみんなに弾かせたら、
「すばらしい、これほどの楽器がもう作られないのは残念だ」
と言うことになって、

ラミレスがそれをはがして、実は私の作った楽器だと言ったと、

そういう逸話ですよね。

これはマヌエル・ラミレスの伝記というと必ず出てくる。

そうですよね、ホセ・ラミレスの本にも。

そう、「ラミレスが語るギターの話」にも出てくる。

メディア・カームブログのこの本の紹介ページ

あれは三世が書いた本ですが、

だから、ラミレス家には代々伝わる伝説なんだよ。

そうですよね。

 

  

 

ここで「ま」持参の料理について、まずは焼き鳥風

 

  

あ、ねぎがおいしい。

葱は蛇腹に切ると中身が飛び出さないんだよ。

あ、そうですね、ストッパーになりますね。

うん 、これは冷ましてあるからいいけど、熱い時にぴゅっと飛び出して来ては困るんだよね。火傷しちゃうから。

なるほどね。

一回焼いてるんですか?

そう焼いてる。焼いた後、味に漬ける。この味が秘伝の…というほどでもないけど(笑い)

 

  

 

一同 うまい、美味しい、

 

  

醤油と梅酒なんだ。

梅酒ね!

ただ甘いんじゃない、ほんのり酸っぱさがある。

梅酒と言えばうちで数年前に漬けた梅酒があるのですが、ちょっと飲んだのですが前はちょっときつくてそれが今年に入って激変したのです。

あれは3年4年経つと色が濃くなって、それと同時にね、ぐっとまろやかになる。これなんかもっとだよ、20何年。

ぐっときましたよ。

そう、だからうちでは梅酒は毎年漬けていて3年位経った時から使い始める。

ワインの熟成はよく言われるけど、梅酒にもありますね。

あるある、ギターと同じ。

熟成の効果は似ていますね。角が取れてまろやかになる。

いよいよギターと同じ。

 

 

次いで数の子

 

  

これってお正月に食べるのと全然違いますね。

酒粕につけたの。

酒粕ですか。すごい美味しい!

お酒が飲みたくなります。

(菊の井のお弁当食べつつ)松風とか雲丹焼きみたいな物入っているからこれもお酒のつまみになるかも知れません。

酒粕も色々あって、某大会社とかで売っているのは全然旨くない。酒屋に行ってちゃんとした地酒の造り酒屋の大吟醸か何かの酒粕を探してくると断然違うよ。1キロ1000円とかそんな感じで1包みが大きい。でもためらう程の値段じゃないし、1キロもあれば相当楽しめるから。
それで魚の粕漬けなんか作ると断然味が違う。これもそう。

粕の力だな。

粕に味噌と味醂をちょっと入れたりして使う。この数の子はもともと塩味がついているから酒粕にまぶしただけ。

 

  

 

ギターの話に戻る。

 

  

で、このトーレスの本見るとトーレスのイミテーションが随分作られたって書いてある。スペインでもドイツでも。
トーレス・モデルを作ったところ、それをトーレスとして転売したとも書いてある。

やっぱりあったんですね。そういうことが。

写真の解説に「トーレス作品とされているギターのロゼッタ」と書いてあったりするし。

「…とされている」というのが意味深ですね。

「とされている」というのが3つも載っている。
巻末のカタログにも結構怪しいのがあるよ。住所のスペルが違っていたり、番地が入っていなかったり、トーレス様式とは違うなんてものもある。

ある資料によるとサントス・エルナンデスのラベルには番号もサインも共にない、とありますね。

うん、でもそれおかしいね。サインはあるよね?

ラベルにサインありますよね。

サントスにはみんなあると思う。そこに書いてあるのはちょっとおかしい。

ある人が、楽器商というか、言ったのですが、サントスの本物は表面板の裏にサインがあると。

ああ、あるよ、僕のにもある。

やっぱりそうなんですね。

サインが好きだったらしくて色んな所にあるよ。

えっ、そうなんですか?

うん、サントス・エルナンデス以外の文字もある。

色々書いてあるんですね。何て?

それが…分からないんだよ。鏡で見ると反対になるし、もともとスペイン語分からないし。だけどサントス・エルナンデスって書いてあるなっていうのは分かるんだけど。他の文字もある。数字じゃなくって。
あれにも(メディア・カームの商品)あるのじゃない?

でも、ないのもあるらしいですよ。

あ、そうなの?

ええ…
サントスじゃないけど、以前ホセ・ルビオがあって…本物のホセ・ルビオということで預かったんだけど、
…修理で松井さんに見てみらったら「裏にPFって読めるんだけど」って発見されちゃって…

音はよかったですよね。

確か、二つあった内、一つが断然よかったんじゃない?

もう一つは明らかにPFだった。よかった方が普通ベロというか一本棹の内側、あそこにPFとあるのがなくて…

なくてほっとしてたところ??(笑う)

そう、発見しちゃったんですよね…

ははあ、DRってあればよかったのに…

DRって…

デヴィット・ルビオ。

 

  

ところでエレキ・ギターに贋作ってあるんですかね? エレキとかフォークとかアコースティックのギターは。

あの世界はどうなんだろうね。

聞いた事ないですよね。

贋物というのではなく、エレキの場合はマイクを交換してあるかも知れないし、逆に交換しなくてはいけないかも知れない。

そうですね。オリジナル尊重でいくのかどうか。

贋作を作る価値のある物っていうと、相当高価でないといけないでしょう。

でもクラシック・ギターより高いよ。やっぱり裾野が広いだけあって。50年代のレスポール・スタンダードなんてうっかりするとブーシェより高いんじゃない?

そんなに高い!?

レスポール・スタンダードという楽器は今でも作られていて、普通に買えるんだけど、そういうプレミア付きは50年代から60年代前半。それこそベラスケスの時期。

ああ、そうですね。

エレキの人は虎目を尊ぶんだよ。この世界の人も虎目は気にするんだなと思ったね。本体はマホガニーで表面だけメイプルを貼ってある。レスポールって裏は平らだけど表はヴァイオリンみたいにカーブしていて、あれが綺麗なんだよね。左右対称でなくて高音側だけカッタウェイで。ところがあれが重い…あのスタイルの良さから考えるよりずっと重くて4キロから5キロあるんだよね。

そんなに!

あれを首から下げて立ったまま1時間も2時間も弾くってやっぱり肉体労働だよね。

まず体力がいりますね。

レスポールというと、以前、石川(鷹彦)さんのレスポールを持ち出そうとした人がいたのですって。

持ち出してどうするの?

何とか協会っていう所に鑑定に出すとブルー・ラベルっていうのが付くと何百万で売れるから、とか言って持ち出そうとした人がいて、それは何とか阻止したみたいだけど。

そのラベルをどうかする気だったのかな。

そう。例えばそのブルー・ラベルをもらったのに、残念ながら付かなかったですとか何とか言って、ラベルを別に利用したり、そういう可能性だってありますよね。

なんか、恐い世界だね。さっきのトーレスのラベルじゃないけど。
ギブソンのレスポールといえば50年代のD45なんかも高いのかなあ。

マーチンのD45ですか。

うん。マーチンって言うのは69年か69年までは横裏がハカランダ:ブラジリアン・ローズウッドなんだよね。

ということは、それ以降は全部インディアン・ローズウッド。

だからハカランダの楽器ってすごくプレミアがついているらしい。

ああ、そうかも知れない。

で、それを持っている人に言わせるとハカランダでないのはD28でもD45でもないと言っているそうだよ。

D28も?

69年以前はD28でもハカランダ。45はハカランダ・プラス装飾がある。

ハカランダのこだわりってすごいですよね、アメリカ人と日本人。

う〜ん、アコースティックの人はハカランダというと目の色変えるよね。

うん、すごいですね。

グリーン・ハカランダなんてとくに。

ハカランダ神話ってあるね。
…でも僕が許せなかったのは、70年代の昔、某有名製作者がね10万円のギターにハカランダだったんだよね。

当時?

うん、その頃手工品は7万か8万が最低で、最高が15万円とか20万円。その最高級品でないとハカランダじゃなかった時代なんだよ。でもその人は10万でハカランダだった。でもね、それが合板だったの。

ハカランダ合板? それってMギターとかその世界じゃないですか?

Mギターなら半手工というその世界だからいいんだ。でも某有名製作者は日本ではギターの名門の生まれで、高級品を作るとして通っていた人だよ。それが合板使ってるって。これはひどいよね。

業界ではもう…

知られていたね。それ以来ね、中から見たのと裏から見たのと木目を確認するようにしたんだけど。

僕が業界に入った頃は、合板ハカランダ、華やか〜な…上級機種機械製品そういうのありましたよね。

墨流しみたいな。

そうそう。

ところでハカランダとジャカランダって違うの知ってる?

ジャカランダってあの鉢植えにしたりする?

違うんですか?

スペルが同じでスペイン読みと英語読みだけの違いだけど、全然別の木でね。ジャカランダはやっぱり南米産らしいけと、アメリカにもアフリカにもオーストラリアにもある。日本でも宮崎あたりに移植して育っているらしい。木の姿はケヤキみたいに背が高くなって、春に紫の花が咲く。だから花の好きな人には人気がある。インターネットで検索すると沢山出てくるよ。
やっぱり勘違いしている人がいて、ジャカランダを育ててギターの材料を確保しようとブログで書いている人がいた。

ははあ、でも気持ちはよくわかりますね。

昔読んだ本でね、コナン・ドイルのミステリーみたいな物かな、まだホームズを書く前、ホームズ・シリーズとは別の、それにね海で幽霊船に会ったという話がある。

コナン・ドイルの?

イギリス人って言うのは船の民族だから、結構船にまつわるミステリーが多いんだね。船が漂っていて、おそるおそる乗り移ってみると人はいない、南米産の高級木材が積み込まれている、という話なんだ。

南米からの高級木材と言えば…

そうそう、これハカランダのことだって思ったな。

それで、どうなったんですか?

いや、話の筋は忘れてしまって(笑)ハカランダだけ覚えている。

普通の読者はそう言う風には読まないですね。マニアの偏った読書法。

ホセ・ラミレスが書いた本に載ってたね。原住民がハカランダを薪にしようとしてる話。待ってくれ、それ売ってくれっていう話。

ラミレスってまだ70年前後にはハカランダとローズウッドの区別ってなかったでしょう。

ないはずだよ。

値段一緒でしたよね。一種類でしたよね。僕の記憶が間違っていると思ったんだけど。

間違ってないよ。昔そんなことで区別しなかったから。それで行けば、アグアドとフレタもないでしょ。

ああ、ハカランダだからってないですよね。

当時からハカランダという事は問題にしてたよ。高級材だと。だけどスペインの楽器ではそこでランク付けはしていなかったはずだよ。

ランク付け、なかったですよね。日本人がしたのかな。

日本人がしたんじゃない? いくつかランクつけて最高級品にハカランダ使うとか。

S先生からも怒られました、そういうのはおかしいと。材料代だけで差がつくのは。なんでハカランダがこんなにって、おかしいと。

ああ、極端にね。
ラミレスも当初は荒井貿易に遊びに行った頃、社長がハカランダ、ローズウッドってね、あの頃そういう事言い始めた頃なのかも知れないけど。

現代ギターができてからだね。

そこで河野さんが色々書いて。で、荒井社長が言うには、ラミレスはローズウッドとハカランダは値段一緒なんだよと。高校生の僕に向かって、そういう話をしてくれた事があって、

33万円!

そうでした。

アグアドは基本的にハカランダが殆どだよね。

ローズウッドのアグアドってあんまり見た事ない。

70年以降にちょっとあるだけ。

70年以降は逆に多いです。

そうか。ああいう楽器は何本もできる物じゃないからランクなんてもともとないもの。輸入されたときに今回はいくらだとかそういう感じ。そうするとそれにハカランダどうこうなんてない。フレタもそうだ。フレタは逆にハカランダ稀れだよね。

の方が少ないですね。一世だってローズが多いですよね。

ハウザーはハカランダ多かったね。

ハウザーは確かに多かったですよね。

 

  

 

つづく

 

 

・・・つづく・・・
前に  次へ  放談トップ  Top