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◆ 第2回 | 主なテーマ | ハウザー |
ハウザー1世1936年と2世1980年を並べて、本を見ながらハウザーの話、 |
ま | リョベートがミュンヘンでコンサートを開いたのが22年、その時にこのうちのどれか(トーレスの本にリョベートが使ったという楽器がいくつか載っている。多分1959年製、FE09)をコピーしているのだろうと・・・。 |
さ
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リョベートモデルと云われている・・・少し小さいトーレス。 |
ま | つまり、リョベートの持っているトーレスをもとに作ったハウザー。今でも3世が作るんじゃない?リョベートモデル・・・。 |
さ | そうです、645ミリ位でボディが小さくて。 |
ま
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それのもとになっているのがこの中に入っている(トーレスの本)。リョベートはトーレスをいくつも弾いたし、いくつも売ったりもしたみたいだよ。売ったというか、こんなに素晴らしい楽器だと云って宣伝したのかな。アルゼンチンの方に残っているのは結構リョベートが持っていったのがあるみたい。・・・これなんかは(トーレスの本)FE16を基にして作ったハウザー。 |
さ | (FE16というのは)資料用のナンバー。 |
ま
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番号つけてないからね、セカンド・エポックは付けているけど、ファースト・エポックは付けてなかったよね、(本を見ながらいろいろ)これが(ハウザーの)大きいラベル・・・。 |
な | ちょっと優雅ですね。 |
ま | うん、これいいよね。これで見ると32年まではこのデザインだったみたいだね。25年のはこれによく似ていてもっと大きい。33年ごろから新しいラベルに変えて基本的には今の3世も同じ。 |
ハウザー36年のロゼットをしげしげと見て | |
ま | ここは合ってるけど、ここはずれてるねえ。 |
さ | ヘリンボーン(herring bone)・・・鰊の骨。 |
ま | 日本流に矢羽根といった方がことばとして綺麗だね。よく見ると結構いびつ、ハウザーは結構こういうのを気にしない。それにこの裏のパーフリングの継ぎ目はさびしいね。 |
さ | その2世(80年)はどうなんでしょう。 |
ま | これは柄が違うけどずれてはいない。裏は同じく簡略型。そういえばベラスケスもそうだ。 |
なお[Classical Guitar]の写真も、「ま」所有の34年も36年と同じデザインでやはりずれている。 データ、本を見ながらの話が続く、この間、あれ、それ、これでの会話が続いている。傍で聞いていると何の話かわからない。ハウザー、ベラスケスなどの縁の話などあって一休み、80年のハウザーをひきながら、 |
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ま | 思い出した、高音のこの部分の音が(以前新品でひいた)ハウザー2世の音がする。・・・このマシンヘッドは似ているけどライシェルやランストファーじゃないね、ライシェルはビスの周辺が同心円。 |
フレタ1980年も取り出し、ハウザー36年と弾き比べて、 | |
さ | これを弾いて思ったのですが、これ(ハウザー36年)の偉大さがフレタを見て改めて感じられる、まだまだ若いぞという・・・。 |
ま | そう、弾きこめばまだよくなるだろうね。それにしてもこのハウザーはあと100年は持つという気がする。僕の31年もあと50年も弾くといい音するだろうな・・・と。でもこれ(36年)は最近相当弾かれているね。10年位前一度みている。その時はこんなに鳴らなかった。前見たときより隙間が埋まった感じがする。 |
さ | これを見たのは何度目ですか |
ま | 2度、最初はまだ売れていない時、それから二転三転した? |
さ | いえ、ワンオーナーでした。ころころ変わっていません。 |
ま | ということは2オーナー。・・・指板の端がサウンドホールとぴったり一致していないね。僕の31年もそうなんだ。普通は一致させているのだけれど。 |
ハウザー80年を弾いて、 | |
さ | ハウザー2世は明らかに60年代後半から違いますね。 |
ま | そう、厚いメッキのかかった様な音がする。 |
さ | 50年代までは箱が共鳴してるかなみたいな音作りで、2世の新しいものになると、あまり木の音がしないような気がするのですけど。 |
ま | そうだね、そういわれれば・・・、木のコーンという感じが無いね・・・。 |
さ | 何か、かちっとコーティングした塗装の音がするような気がして。 |
ま | この80年の、この位経った楽器は(ハウザー2世の後期型)初めてだったのだけれど・・・。もっと経ったものは見たことがあるけどね、60年前後のハウザー2世は見たことあるけど、新品で知っていて、あまり感心しないな・・・と思っている楽器の20年、30年経ったものは初めてだった、やっぱり違うね。20年後でもやっぱり持っていた感じが付きまとっている。やはり50年代のハウザーの音とは違うね。 |
な | 1世のできたばかりの楽器ってどんなものだったのでしょうね。セコビアはできたてからずっと使っていたのですよね。20年以上、ほやほやでもいけると・・・。 |
ま | これは想像でしかないのだけれど、それと僕の楽器の好みでもあるのだけど、ばーんと鳴る楽器より細いところからぴゅーっと飛び出す様な音が好きなんだね。 |
さ | よく仰いますよね、この高音が太すぎると。 |
な | しまっている? |
ま | 細いところから飛び出ないとだめだよ。勢いよく飛ぶ感じ。 |
な | だけど細い感じ、締まった感じ? |
ま | うん、そういう音がしたと思うよ、ハウザーは。かっちり締まった音でなおかつ、その時なりに鳴っていたと思う。 |
な | 今ほど豊ではないけれども、出るべき音は出ていたと |
ま | これは弾いていてもよくならないな、という感じがあるじゃない、でも、いい物は最初から鳴るといえば、鳴るんだよね。 |
な | 核心が鳴っていると・・・。 |
ま | そう、そういう感じが有るか無いかで、こういう楽器が最初から鳴らなかったという事は無いと思うんだよね。固く引き締まった音で鳴っていたと思う。 |
さ | 「ま」さんの31年とか、どうなんでしょうね。 |
ま | あれは今でもそう・・・、すごく立ち上がりが強くて、芯が強くて、指に力がいる楽器だね。 |
さ | 「ま」さんの持っている34年以降のもの(ハウザー)を見るのは今とても少ないです。なかなか出てこないです。 |
ま | まあ、もの自体少ないだろうし、もっている人は手放さないだろうし・・・。今ある1世は50〜70年は経っているわけなんだけど、この36年にしてもルイゼ・ワルカーがあのタッチで相当期間弾いたはずだよね。でもつぶれる気配は何もないからね。 |
な | 頑丈そのもの・・・。 |
ま | 不思議なんだけど、クラシック・ギターではないエレキやアコースティックの人たちがハウザーの名前は知っている。ハウザーとラミレスは知っている。 |
さ | 我々のマーチン、ギブソンの様な感じにですね。 |
な | マーチンは誰の弟子だったのでしょう。 |
さ | マーチンはシュタウファー、シュタウフェル・モデルというのを作っている。 |
ま | 某楽器店あたりなどでは、そういうお客さんが結構いてね、ハウザーみたいな高いギターで古賀メロディなんか弾いてるところに居合わせたことがある。おもしろかった。 |
さ | 木村好夫はハウザーとロマニロスでしたものね。結構演歌系の人はラミレスと思いきや、違うのですね。 |
ま | かっちりした音を好むのだね。マイクにうまく乗るのだと。 |
さ | こちんとしたのがいいのですね。 |
ま | 作った人たちは想像もしないだろうね。 |
さ | ベラスケスなども結構使っている人がいます。 |
ま | 演歌に関しての傾向は、かっちりタイプ。 |
さ | 昔、ジャズのアール・クルーが20年以上前にアコースティックのアルバムを出した時は、ベラスケスでした。 |
ま | 僕はポール・サイモンの曲集を見たときに、写真に出ていたのが、はっきりとはわからないけど、ヘッドはハウザー型しているの。その時ベラスケスかなと思った。ラミレスはエレキのグループが使っているのを見た事がある。クラシックの人間からは想像もつかないテクニックを遣うのね、指を決めているみたい、1弦は薬指、2弦は中指みたいな、同じ指を続けて弾いたり。難しい曲は無理なのじゃないかと思ったけど。 |
トーレスの本を見ながら、 | |
さ | このFE9番、いい音出そうですね。 |
ま | うん、そんな雰囲気がある。・・・ハウザーの元はと云うと、つまり(ハウザーの作る)スパニッシュタイプの元は、どうも、リョベートが持ち込んだトーレスらしくて、そしてセコビアの持っていったハウザーを持っていってコピーしたとか、それ位の事はやっただろうけど、それと同じ寸法のものをセコビアが使った訳ではないみたいだね。結構サイズは違うし。いろいろ工夫して作り上げた・・・。ハウザーも同じ物を何本も作る人ではなかったし、その都度違うことをやっているし。 |
さ | ここに資料があって、ハウザーが28年から50年の間にこんなにサイズが違うんですよ。6〜7種類も(トーレスの本)。 |
ま | あ、ほんとだ。マヌエル・ラミレスもここに出てる、358・・・(あとで)じっくり見てみよう。 |
さ | ハウザー・チェックの場合はこの辺りが重要かと・・・。 |
ま | このハウザー34年、ヘッドの形・・・(ファイン・スパニッシュ・ギターの写真。サントスに似た形)。 |
さ | 36年のは(バストが)280、結構大きい、フルサイズ(ハウザー計測中)。 |
ま | この辺り(36年)から大体同じになってきたのかな・・・。 |
さ | 戦後のものの方が小さいんですよ。49年、晩年ですね。 |
ま | その頃のものはあまり見ていないんだ。むしろ30年代のものの方が多い・・・。 |
さ | そうですね、40年代は戦争ですよね。 |
ま | 特にドイツはね。日本も同じか・・・。 |
さ | ハウザーの40年代前半、41、42、43年見たことないですね。 |
ま | それどころでは無かったと考えるべきかと。 |
さ | 一本も記憶にないですね。 |
さらにトーレスの本を見ながら | |
さ | 1300グラム台と云ったら軽いですね。ハウザーの資料を見てみると一番重いものでも、1330・・・。 |
ま | それほんとにウェイト? |
さ | あ、表面板面積だ・・・。 |
ま | 重さは1500位あるのではないか、載っていない? |
さ | 重さは出ていないですね。 |
ま | 表面板面積の方が重要かも知れない。この本も同じ人が測っている訳ではないし、季節やなにかでも違うと思うし。これ(36年)なんか板厚自体が厚いでしょ、3ミリくらい、ハウザーの特徴は板が厚いという事。こんなに張りのきつい楽器というのは他にないよ。そこらがハウザーの特徴で、アマチュア向けじゃないっていうのはこういう事なのだけど。トーレスというのは、表面板すごく薄いらしいじゃない?トーレスはその意味で100年以上経って初期の性能を全て維持しているかどうかわからない。 |
さ | そうですよね、あと、修理を重ねて薄く削られた可能性もありますね。 |
ま | あるだろうねえ。 |
さ | この(1936年)サイズになったのを見るのは30年代半ばですね、「ま」さんの34年ですからこの辺りからですね。 |
ま | うん、あれもフルサイズだよ。でもまあ、サイズに関わらず、張りの強いのはずっとだね。表面を厚く作ったからなんだろうね。トーレスは随分薄いから、トーレスとハウザーの違いはそこなんだね。 |
な | 何故ハウザーは厚くしたのでしょう、トーレスモデルを作った時もやっぱり板は厚かったのでしょうか? |
ま | そこまでは・・・。 |
さ | 20年代のいわゆるコンサートタイプっぽい、少し小さいものは3本位記憶にあるのですが・・・。 |
ま | 20年代の? |
さ | こんなにふくよかではないですね。 |
ま | そう・・・、じゃいわゆる試行錯誤の段階か・・・。 |
さ | そうですね、もっとなんというか・・・古い音?がしていましたね。 |
ま | じゃ、あれかね・・・、ウィンナ・モデルの感じが残っていたかな。格好はスパニッシュでしょ。 |
さ | そうです、ただ1本ネックはあの(ウインナ)タイプでした。 |
ま | ああ見たことがある、メイプルでしょう? |
さ | それはハカランダでしたが、メイプルのもありましたね。僕が扱ったのはボディは完全にスパニッシュで、ネックがあのタイプでした。 |
ま | じゃ12フレット以上の指板が浮いている? |
さ | 浮いてます。 |
ま | あれね、どうもあそこで結構音が違う。 |
さ | 違います・・・。 |
な | (ボディの厚さは)かなり薄いのでしょうか。 |
ま | 20年代のスパニッシュとウィンナとの混血のようなのは薄い箇所と厚い箇所との差が大きい。僕の31年はかなり薄い。34年は結構厚い。 |
さ | 指板もかなり変わっているかな・・・。 |
ま | 34年は指板が結構厚くて、サドルが高い。変わっている(指板を交換した) 可能性はあるね。 |
さ | あの頃の作り方は弦高が理想的な高さになるようになっていたと思うのですね。現代の演奏家にちゃんと使えるような。 |
ま | ところが34年はサドルがちょっと高すぎてね・・・。ネックの角度がほとんど平行なんだ・・・。 |
さ | そうか、それはそれでまた違うし・・・。 |
ま | ただ指板が結構厚いから、指板の高音側を下げればサドルも下がる。いつか余裕があればやってみてもいいね。やるならゼロフレット無くしたいけどな。ゼロフレットがあるといつもフレットを押さえた状態にあるから、特に高音弦はすり減るというか、圧力で引っ込むんだよね。 |
な | ゼロフレットが? |
ま | いや、弦がね。いつも押さえているから・・・。だから調弦したときに狂いやすい、押さえているから留まっているみたいだけど、調弦して動かすと元に戻ってしまうから。 |