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◆ 第3回 主なテーマ ベラスケス、ハウザー
製作家今井勇一さんとの対談を一部引用して、ベラスケスの話

この前、今井さんが50年代から60年代初頭にかけてのベラスケスを絶讃していて、ハウザーを超えたとまで云っていたでしょ、あれは1世かな?
2世かと・・・。
      
第1回放談に加わって(乱入?)頂いた、「ま」と製作家:今井勇一氏との会話(本文「い」)
    
僕は、ベラスケスはTさんとIさんのあのお二人のは別格に感じている。
あれは僕も覚えています。62〜3年と、54年くらいの、すごくいいですよね。
僕の中で、一番影響を受けた楽器は、あれですもの。僕は当然アグアド、フレタなどいろいろ銘器といわれるものは一通り全部コピーを作ったけれど、その中で一番ピンときた楽器が、あのベラスケス。
特に50年代の楽器、あれはよかった
あれは、しかも小振りでね、音は断然よかった
枯れた音でね。
そう、枯れた音。
そして余計な制動が一切かかってない音、軽く出る。ベラスケスは50年代に限るなんていったらいけないかな。
あれはハウザーを超えていたと思う。
    
あのベラスケスを見た頃、ハウザーというとなかなか手に入らなくて、たまに見ることができても固くてがちがちの楽器だった。
70年代ですね。
苦労して手に入れたけれど、手が痛くなってしまってとか。そういう話を聞いたし、ハウザーはその頃あまりいい印象はもっていなかった。高かったし、1世は見ることができなかったし・・・。そんな頃、さっきいったベラスケスが珍しく2本続けて入ったんだねえ。特に50年代は良かった。
それでね、その後いろいろな楽器を見てきたけれど、あの頃(70年代前半から半ば、「ま」の楽器遍歴の出発点)一番印象に残っているのは50年代のベラスケスと、74年に自分で買ったベルサールの新作と2・3年後のロペスの新作・・・。でもその後いろいろ見たり、買ったりして、いろいろ解った事があったから、当時感激した楽器でも今見たらさほどでもないのかなとも思ったけれど、今井さんのお話を聞いて、半分納得し、そして半分意外な気がした。
今持っているベラスケス(57年)は記憶としては近いですか。
近い様な気がするけれど、あれの方がもっと音が枯れていた様な気がする。
前に見たときの印象の方が?
30年前だから、分からないけれど、並べてみないとね。僕の方が、もっとパワフルな様な気がする。時間はこの方が経っているんだけど。当時はまだ日本は分からない時代で、何十年も経った楽器は役に立たないと思われていた。
    
30年前に20年経った楽器と、現在45年経った楽器を比較検討している。
     
ベラスケスはハウザーのコピーから出発したとは聞いていたけど、最初に見た記憶としては格好はともかく音は似ていないんだね。比較していたのが50年代から60年代にかけてのベラスケスと70年代のハウザーだから今思えば当然なんだけど・・・。
ベラスケスはハウザー1世がもとなんですね。
いいものを比べた場合、僕はベラスケスの方がまだ普通の人(プロではないという意味)の手に負える楽器だと思う。ベラスケスが最初からバンバン鳴るとは思わないけれど、まだ普通の人のタッチと練習量で遣いこなせるのではないかと・・・。
ベラスケスも70年代後半から感じが変わって、ガチガチになりましたよね。
S氏の持っていた、あれは70年代最初の方のものだったかな、大型化していたけれど、70年代以降の中では良かったと思う。70年代半ば過ぎからのものは、これはもう同じベラスケスという名のついただけの楽器。50年代のものはやっぱりすっきりして良い音がする。
ホールで聴いて本当に良かったですね。
ハウザーをあのレベルまで弾き込むのはとても大変な事だと思う。・・・ところでこのあいだ、あるところでベラスケスの新作を見たんだ。
どうでした。
音はまあ周囲も騒がしかったけど、どうもぱっとしない。でもサイズは50年代と同じくらいになっていたよ。
80年代半ばにもとに戻したのです。
でも音はもとには戻らない・・・。
    
  ホセ・ラミレス3世(MTマーク)を取り出す。
    
日本で楽器の話がされ始めたのが、70年前後からですが。
やはり現代ギターがイニシアティブをとったね。
その当時ハウザーの音というのは、みんな2世の音をさしていたのですね。
あの頃1世を見た人はいなかったのだから。
2世の音を指していて、ある一部の地域で1世は・・・
ギタリストで初めて1世を手にしたのは、Tさんだったのでは。あの頃の2世は硬くてね・・・。塗りも1世とは違って弾きこんでも差は残る。さっき云ったようにハウザーは最初は硬いんだけどね。
硬くて本当に、あの頃入ってきた新しいハウザーは、ハウザー2世でも(1世の作りとは)変わってしまったハウザーだったですね。今思えば・・・。
50年代、60年代ジャストくらいのハウザー2世にはかなりいいものがあった。だからハウザー1世をもとに直系のハウザー2世と、それをコピーしたベラスケスが同じ様なことをやり始めて、かなり最初のうち、競っているんだよね。50年代は競っていて、それぞれに60年代から違う方向に行ったんだ
60年代後半で松のベラスケスとハウザー2世が両方とも固くなって、ネック太くなって、同じ様な傾向に変わっていったのです。いま思うとね。
やはり大型化かな?
そうです、両方とも。
弦長は650なんだけど、ボティが厚くなっていて、ネックも厚く広くなった。
じゃ、重くなった?
体重も重くなった、60年代後半から世界的な傾向ですかね、楽器の大型化というのは。やはりラミレスの影響なのでしょうか。
でもラミレスの影響で大きくなったのは弦長でしょう、ラミレスはボディはそんなに大きくないよ。
厚みはあるけれど、面積としては・・・。
これより面積で云えばフレタの方が大きいと思う。フレタ、アグアドは厚さも結構ある。
    
  実際に楽器を取り出してさかんに測っている様子、厚み長さなど各々比べている、
    
僕が見た中で今まで一番大きなものは、670ミリのジェロニモ(ヘロニモ)・ペーニャ・フェルナンデスが別格で、次にミゲル・ロドリゲスの2世、ボディは厚いし・・・。
今お持ちの中では。
うん、あれが一番大きい。76年だからちょうど大きいのが流行った時期のもので、いつも大きかったわけでもないみたい。そういえばジェロニモも80年以降は普通サイズだよ。

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