放談-10

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◆　第10回	主なテーマ	「音」をテーマに
しばらく間が空いてしまいました。その間放談がなかったかというとそうでもないのですが、あまりに脈絡のない話の連続で、とてものことに公開できるものではない。「これではいけない、たまにはまとまった話でもしよう」と、3月某日「音」をテーマに集まりました。以下はその様子です。なかなか音にたどり着かないような気もしますが･･･

手始めに、アンドレス・セゴビアのSP時代のCDをかける。年代から推して使用楽器はマヌエル・ラミレスとヘルマン・ハウザー1世と考えられる。「ANDRES　SEGOVIA　1927～1939　Recording」　EMI

さ	録音年書いてあります？
ま	バッハのニ短調のプレリュードとアルマンドのイ短調ね、これは1932年と28年。
さ	28年。
ま	ということはやっぱりサントス。（1912年製　マヌエル・ラミレス　実際の製作者はサントス・エルナンデスだと広く知られている）
さ	サントスですね。
ま	バッハのフーガも28年、それからポンセの組曲、あれはハウザーだといったやつ。
さ	何年ですか？
ま	30年。
さ	30年、へえ～･･･
ま	それからソルの魔笛は27年、そうするとこれはサントスなのかな。
さ	27年はサントスですね。
ま	ドゥ・ヴィゼー、39年。
さ	ドゥ・ヴィゼー、それはまちがいなく･･･
ま	トローバは27年、なるほどね。カンツォネッタ36年。アラールの練習曲30年。アルハンブラの想い出27年･･･
さ	ほう。
ま	後半、僕はハウザーが多いかと思って聴いていたのだけど、ちょっと高音が細いかなというのは、やっぱりみんなサントスというかマヌエル・ラミレス･･･
さ	マヌエル・ラミレスですね。でも曲によってはっきりわかるのとそうでないのとありますね。
ま	こうしてみると、ほとんど例の有名な1937年のハウザーを使う前なんだね。
さ	すると、ハウザーはいつのでしょう。
ま	このジャケット写真見ると、ほらセゴビアはほとんど同じ時期でしょう。
さ	同じ年代ですね。
ま	そしてヘッドの先が3つに分かれている、これがマヌエル・ラミレスで、こちらが･･･
さ	あ、これはルイゼ・ワルカーのもっていたハウザーと同じヘッドをしている。
ま	そう、そしてラベルもこうだし、これは1928年のハウザーじゃないかと思うんだよ。
さ	なるほど。
ま	1929年に初めてセゴビアが来日したときに、マヌエル・ラミレスを使ったんだけど、1928年のハウザーも持ってきてたんだって。コンサートによってはハウザー使ったらしいよ。
さ	それなにか記録があるのですか。
ま	今、手に入る本ではないね。古い本や雑誌で載っていた。現代ギターにもあったよ。

	ギターを並べる。ケヴィン・アラムの最新作と昨年のもの。2本並ぶのは珍しい。そして、サントス・エルナンデス1929年。「ま」サントスを手に取る。左から、サントス・エルナンデス1929年、ケヴィン・アラム Ziji、ケヴィン・アラムMarika、佐久間悟新作

ま	これ塗り直ししてあるね。
さ	あ、してあります。ただこれ、いろいろ直しはＫさんの様な気がするんです。ネック周りとか
ま	ここのナットはＫさんが作ったっぽいね。
さ	ただその辺ね･･･（ネックからヘッドにかけ）
ま	Ｋさんがこんなきたない事するかな？
な	Ｋさんというのは幻の･･･
さ	そう、名人。
ま	（マシンヘッドを見て）これはフステーロのフレタ・タイプ、新しいのに変えてあるね。
さ	そうですよね。
ま	この音だな、高音と低音のコントラスト。これ音は生きてるよね。
さ	生きてます。
ま	見てくれはあまり良くないけど。音は原さん（原　善伸さん）のサントスに似てない？
さ	全体のネックの細さとか、感じも原さんのに似てますね。原さんのは660ミリですが。
ま	あ、大きいんだ。
さ	ええ、これは655です。
な	気づいたのですが、表の形と裏の形が違うのです。

	といわれて裏返してしげしげと眺める

ま	（左右の違い）こっちがいかっている、これがなで肩の感じ。
な	表から見ると･･･
ま	同じようだね。
な	これがおかしい。
ま	これが何か接いであるよね。（バインディングのこと）
さ	ああ、そこはそうですね、明らかに、そこの継ぎ足しの修理はかなり昔にされた様ですね。松井さんが言っていたのですが、そこはＫさんだったらもっと上手にやっただろうと。だからもっと以前にされたのだろうと･･･
ま	このパーフリングは続いているよね、こっちは続いてないけど。
な	裏板の形は多分･･･
ま	じゃ、最初からこうだったと。
な	なんか変だな～と･･･
ま	幅違うんじゃないかな、これ。違うからこうなる。
さ	非対象。

	メジャーを使い測定

ま	なんか大きく見えるね。
な	明らかに。
ま	真ん中どう？　11.23･･･これは11.4位ある、1ミリくらい長いみたい。
な	ああ、ほんのちょっと。

	ネックを見て

ま	これ前から気になっていたのだけどカポタストの跡があるんだよね、それでいて、小さいキズはあるけど、ほんとにカチカチ叩いた跡はないんだ。はがしたのかな。
さ	ゴルペ板をはがしたときに全面塗り替えたのですかね。
ま	うん、はがして塗り替えたか･･･でも、これフラメンコ弾きたくなるのがわからないでもない様な音なんだよね、サントスっていうのは。立ち上がりに特徴がある。これ中身は覗いた？
さ	ええ、一度覗きました、もう一度見てみますか？
ま	何となく見えるな、これ扇状じゃない？これがないんじゃないか？
さ	ああ、そこがね。（扇型の外側の力木のこと）
ま	サントスで時々ある。

	リモコンつき小鏡で内部を覗く

ま	あ、5本だね。
さ	5本ですか？５本のサントスだと･･･
ま	ああ多分あれだな、やっぱり僕の持っているのと同じタイプじゃないかな？
さ	同じですか？
ま	うん、ちょうどうんと外側は見えないのだけど、これが扇でもあまり開いていない位の5本でこう（ギターを立てた状態で下側に2本、11時5分くらいの傾き、わかりにくくてすみません）あるのではないかな、ここに何かあるかも知れない。
さ	サントス、７本でここがあるのと。
ま	７本で下がないのもあるよ。5本でこういうのもあるんだよ。

	表面板を斜めに見て

な	ここになんかあるような気がします。
ま	うん。ここになんかあるような気がする、ここもそんな気がする。
さ	もう一度見てみましょう。
ま	奥ってなかなか見えないからね。
な	鏡が･･･この角度の方が見やすいかも。（あれこれと傾けて試す）
ま	これ中に電気入れて写真とると一発なんだけどね･･･見ればぱっと解るんだけど。
さ	うん、5本ですね。
ま	5本でしょ、その奥は見えないのだけど、多分5本の場合は斜めにたてね、反対方向にあるような気がする。
さ	うーん、よく見えない。
な	そのアイディア？　調べたいですよね。

	「な」電池を換えたての豆電球を持ち出す。

さ	見えるかな？
な	暗くしてみましょう、消しますか？

	照明を消す、真暗･･･

さ	うん、あっ！
な	透けてる透けてる、わぁ～･･･
ま	ほら、平行に近いね。
さ	そうですね。
ま	で、こうあると思うんだよ。かなり外側にある･･･えっないね～。
さ	ないですね。
ま	5本だけか･･･
さ	ないですね、ここが
ま	新しいタイプか･･･単純5本だ。
さ	ほとんどまっすぐですね、扇ではないですね。
な	ストレートですね。
ま	ほとんど垂直に近い。
な	でも、こんなに簡単に見えるんだ！
ま	これもっと明るい電球だったら･･･
な	一発ですねえ、洞窟の探検みたいで･･･感動！いや～楽しいですね。
ま	普通の何でもない白熱電球がいいよ。ハロゲンなんかの小さいのだと高熱が出てしまうので危ない。

	一旦照明をつけ、今度はケヴィンの内部を覗く。

ま	ケヴィンは多分7本だよ，そう変わったことはやっていないと思う。
な	消しますよ。（再び消す）
ま	ああ見える見える、７本だ。多分外側のバーがある。

	一同　ほんとだ。

ま	「か」さん帰ってきたら驚くよ、何やってんだって。（か、買い出し中）
さ	ここにありますよね。
ま	うん、あるある。
な	７本のこうですね。これは前からあった方です。（新作のケヴィンを出して）ではもう一度。（三たび暗闇）
ま	間隔が広い様な気がする。
さ	７本は７本ですけど、なんかまばらな気がする。
な	下も細いかもしれない、板薄いって事ですか？
さ	こちらの方がよく見えますね。さっきはよく見えなかった
ま	いや、サントスがよく見えない。これ、塗りじゃないの？
さ	あっ塗りで？
ま	サントスの表面ってそう厚くないと思うし、やっぱり塗装の色が濃いのじいかね。僕のケヴィンなんかね、この扇の要が延長するとこの辺（指板上）にくる。この辺（表面板上）に収まらないで。それとたしかこの辺りを通過してるよ。
さ	ああ、アンダーハーモニックバーみたいな･･･
ま	これはなっていないみたいだ。
さ	これは･･･通過してないです。
ま	ちょっとずつ変えてるのかね。でも基本的にはトーレス・タイプといわれる･･･
さ	そうですよね。扇の開きがちょっと違ったね。ケヴィンはちょうど槇さんの時代のもね、中を見てたら１本ずつ･･･
ま	そう、うんと違うのあったね。
さ	当時1本ずつ書き留めていた手帳がね、ミックの倉庫に･･･
ま	あ、置き去りになって･･･
さ	手書きで書いてた、門外不出の･･･あれは残念なことをした。
ま	この2本の間にもう1本あったよね。
さ	ええ、あれも見ていただきましたよね。
ま	うん、横方向の縞がきれいなの。
さ	実はその後に1月に1本入ったのです。ネオハカの様なちょっと変わった楽器でした。これは来たばかりです。あの表面に縞の多い楽器はイングルマン・スプルースだったんですよね。これは（昨年作）ジャーマンです。
ま	あの表面、イングルマンなの？
さ	イングルマンなのです。ケヴィンの仕様書にそう書いてありました。
ま	仕様書のこれなんだった？　あ、最新作はまだか･･･これが櫟だよね。（昨年作のバインディングの素材）
さ	はい。いちい。
ま	これは黒檀だよね。（新作のバインディング）
さ	まだ来て２日目、ほとんど音が･･･1時間も弾いてないですね。
ま	イングルマン・スプルースにあの位横の縞があるんだ･･･ひょっとするとちらちら（縞または斑のこと）のないイングルマン・スプルースって弱いのかもしれないね。
さ	これは（新作）まだ仕様書が来てないですが、僕はイングルマンかも知れないと思ってます。

	ここに「か」買出しから戻り、会話に加わる

か	昨日来たケヴィンね。
さ	そう。
な	この辺違いますものね。（新作の周辺は赤と黒で独特の雰囲気を持っている）
ま	重さが全然違う。こちら（昨年作）の方が重い。
さ	重いですよね。
ま	（弾きながら）ん？　ちょっと印象が変わった。重い割に音は重くないね。
な	なんか全然違いますね。
ま	うん、全然違う。弾いてて、最初より全然違ってきた。よくなってきた。締まってて。１年違うからね。この重さの差はハカランダのせいなのかね。
さ	ハカランダの質の差ですか･･･
な	濃いハカランダですね、こちらは。（昨年作）
ま	うん、これは濃いハカランダだね、でもそれも（新作）結構濃いよ。
さ	最近こんな濃い色のハカランダってないです、かなり濃いです。
な	横の色はちょっと薄い感じがしますね。
さ	これだけのハカランダって今無いですよ。信じられないよ、これ。
ま	どちらがいいともちょっと言い難いね。結構いいよ、どちらも。
な	すごい変わった印象を、僕は。
ま	でもその赤いの好きじゃないなあ、僕は（笑い）。ラベルもいかんし。
な	もう少し表ニスが濃かったりすると･･･
ま	うん、赤っていうのはスペインでモザイクによく使うんだけど、ケヴィンの場合はなあ･･･
な	サントスにも赤ありますよね。
ま	サントスはこの真ん中に赤があるね。（ロゼット）
さ	（ケヴィンの昨年作を取り）槇さん、この材ってここが（ネック）、こんなメイプルみたいな･･･
ま	うん、それそうだね。
さ	珍しいですよね。
ま	セドルにこういうのがあるんじゃないの？　時々見るよ。
さ	そうなんですかね。
ま	この前セドルこと調べたら、葉巻のケースに最高だっていわれていてさ。どこかのデパートで葉巻かなんか扱っているショップがあったものだから、ちょっと覗いてみたのよ。
さ	そうなんですか？
ま	うん、葉巻なんて皆高級品でね、ケースもある訳ね。こちらはそういうものがいくらぐらいするものだか知らないけど、しげしげと眺めていたらね、お店の人が来て、「葉巻をお吸いですか？」なんて聞かれてしまった。こちらはただ材料に興味があっただけなんだけど。確かにこういう感じのケースは雰囲気が良さそうな気がするね。まあマホガニーだとか、そういう仲間だね。

	（仕様書を調べる）

さ	このネックね、ブラジリアン・セダー。
ま	ブラジリアンか。でもセダーってついているからやっぱりセドルだ。ということは、これは辛うじて取引完全制限ではないんだ。
さ	そうなんですね。
ま	ホンジュラス・マホガニーって云うのは、もうワシントン条約の制限品なんだね。そうするとさっき云った葉巻のケースなんかは何で出来ているのかな。
さ	たぶんきれいな合わせですね。
ま	うん、実に渋くてぎらぎらしてなくて、きれいだよね葉巻のケースは。却ってハカランダのケースではおかしいし。
さ	これみよがしになってしまいますね。
ま	それにローズウッドの系統は多分香りがあるのだね。葉巻みたいなものには合わないのではないか。
さ	ああ、混ざってしまってよくないとか。

・・・つづく・・・
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